睡眠は何のためにあるのか?
最も明快なのはいわゆる睡眠回復説でしょう。
たいへん率直に受け入れられる考え方ですから、アリストテレス以来の大昔から存在します。
この代表格とみなされるのがアメリカのHartmallとイギリスのOswaldでしょう。
彼らは睡眠が回復ないし修復に必須であることを生化学的に説明しようとしています。
つまり、ヒト徐波睡眠(ノンレム睡眠のうちの睡眠段階3+4)の際に成長ホルモンのまとまった放出が起こることを根拠として、DNAの修復や巨大分子のタンパク質合成のために徐波睡眠が必要であると主張しているのです。
また、レム睡眠が高等動物に多いことを重視して、レム睡眠こそ高度の精神活動に必須の眠りであるとしています。
そのほか、神経細胞の終末にあるシナプスの修復に着目する考えもあります。
"免疫過程としての眠り"も、睡眠が生体防御に役立つという回復説あるいは保護説の延長に位置する
ものでしょう。
イギリスのHorneは、「身体のためには睡眠は不要だが、脳の回復あるいは保全のために最小限度の睡眠(中核睡眠、coresleep)が必須である」と主張しています。
脳の発達程度に対応して、どうしても必要となる睡眠量が動物ごとに決まってくると彼は推論します。
しかし、多くの動物はそのほかにも特に活動しなくてもよい時間を眠りに当てて、省エネルギーなど生存上の策略に役立てているのであり、これはいわばおまけの睡眠(随意睡眠、optional sleepです。
したがって、眠りを短縮したいならこちらを削ればよいと示唆しています。
さらに、ヒトで大切なのは徐波睡眠ですから、これが睡眠期の初期に現れる中核睡眠に多いのであって、後半以降の随意睡眠にはレム睡眠が次第に増えるのだと説明しています。